「ふたりのピアノ」CD の紹介
旧版「ふたりのピアノ」全5巻の全曲を収録したCDです。赤ちゃんから大人まで、お部屋で和んで聴けるCDになりました。
ナミ・レコードより発売〈WWCC−7362〉
アマゾンでも購入できます。
《ドリー》や《マ・メール・ロワ》の前に弾いてほしい!!


本誌でも親しみやすい文章とピアノ曲で多くのファンを持っていた作曲家の内田勝人氏が急逝されて2年半。氏を慕う教え子たちによって、連弾曲集《ふたりのピアノ》全5巻の全曲が、このほどCD化された。
この、《ふたりのピアノ》の「ふたり」とは先生と生徒。「バイエル併用連弾曲集」とうたわれているように導入期のレッスンに活用できるよう、親しみやすい歌詞付き・難易度別・5冊分にまとめられた教育的な曲集だ。しかし今、この全曲を聴いてみて改めて思う。「バイエル併用」として考えると誤解するだろう。この使い方、味わい方は、バイエルのおよそ対極にあるような気がするからだ。何よりも、全編から鮮やかに伝わってくるのは内田氏の「遊び心とユーモア」。おもわずクスリとさせられ、アラ?と言わせられ、ほぉーとうなずかされたり・・・。
譜面の向こうでウインクしたり、ベロをだしたり、ニヤッと微笑んでいる内田氏の顔が彷彿とする。大まじめだが、ぜんぜん生真面目ではなく、音は美しく、親しみやすい。と言っても、今の日本の子どもたちがなじんでいる音とは少し違う。フランスの子どものために書かれた曲集の中にこんな音があったなあというような、お洒落で、斬新で、懐かしくて、暖かい、そんな響きである。譜面はやさしいけれど、このピアニズムは高度だ(先生パートが)。技術的にというよりも、音楽的に、感覚的に、和声的に、リズム的に、イマジネーション的に高度であり、ニュアンスを生み出すセンスが要る。生徒と弾く前に、むしろこれは大人(先生)同士で弾いて味わいたい。和声感覚の練習として、呼吸の練習として。これは、《ドリー》や《マ・メール・ロワ》を手がける前に、ぜひ弾いておきたい、そんな連弾曲集である。        
[音楽之友社・ムジカノーヴァ]2000年9月号より転載